現在のスプラトゥーンコミュニティは、ブキを評価するとき「戦闘の強さ」にあまりにも偏重しているように思う。
しかしスプラトゥーンにはレギュラー、ガチ問わず、キルを多く取った方が勝つというルールは存在しない。
これは、キルレートが低くてもチームに貢献するプレイは存在することを示しており、実際問題、レギュラーはもちろん、ガチでもキルレートで劣るチームが勝つ試合は少なくない。
確かに、全ルールを通してキルを多く取ることは、ほとんどの場合勝利しやすい状況を作る。
しかし、キル数が直接勝利に関係ない以上、それの本質は「リスポン時間」と「前線復帰までの移動時間」の時間稼ぎであり、仮に一切キルを取らなくても、けん制により同じだけ敵を足止め出来れば、それはほとんど等価といって差し支えない。
もちろん相手をキルすることは相手のスペシャルゲージを減少させるので、全くの等価値ではないが、キルを取りに行くのと、ただ足止めするのとでは、自分が返り討ちに遭うリスクでみるとキルを取るほうが圧倒的にハイリスクと言うことが出来るだろう。
来るフレンドチーム戦の登場により、スプラトゥーンの戦闘は今とは比べものにならないほど高度に戦略的なものになる。
そのとき、キル一辺倒のプレイスタイルで果たして通用するのだろうか?
一度、考えてみると良いだろう。
しかしながら、前述の「戦闘の強さ」一辺倒の評価軸のせいか、プレイヤーコミュニティ間で出回っている解析データには「攻撃力」や「射程」など、キルに直結する情報が豊富にある一方で、立ち回りを助ける総合的な性能についての情報はほとんどない。
そこで今回はブキの評価を再考するにあたって助けになるだろうステータスを2種類計測したのでご利用いただきたい。
ブキを評価するとき、私たちはインク効率や射撃レートなどに基づいてナワバリを塗り進める効率を「塗り効率」と表現する。
インク効率が高ければ確かにインク切れを起こしにくく、長い時間射撃できる。射撃レートが高ければ、短い時間でナワバリを塗りつぶすことができる。
しかし、ときどきそれらを度外視して、「塗りやすさ」「塗りにくさ」を感じることはないだろうか。
私はそれの原因として、「インク飛沫数」が関わっているのではないかと考える。
インク飛沫数とは、インクを射撃したとき、インクの実弾に伴って地面に落ちるダメージを持たないインクのことで、インクの着弾地点と自機の間に、ランダムな射程で落下する特徴がある。
当初インク飛沫は射程と相関しているか、全シューターで同じ個数であると仮定して検証を始めたが、実際には全く異なり、それぞれのシューターに異なるインク飛沫数が設定されていることが判明した。
インク飛沫はランダムな位置に落下するので、必ずしもすべてが塗りポイントに還元されるわけではないが、戦闘で足下の塗り合いになったときの有利不利に大きく関わる要素なのではないかと考える。
以下で示すインク飛沫数は最大射程までインクが飛んだ場合のみ一定数となる。最大射程に達する前にインクの実弾が壁や敵などに当たった場合は、インク飛沫が発生しなかったり、一部しか発生しないことがある。
インク飛沫数
ボールドマーカー | |
---|---|
プロモデラー | |
わかばシューター | |
シャープマーカー | |
N-ZAP | |
スプラシューター | |
.52ガロン | |
L3リールガン | |
デュアルスイーパー | |
プライムシューター | |
.96ガロン | |
ジェットスイーパー |
並び順が不規則に思えるかも知れないが、この表は「射程」、「射撃レート」、「インク効率」でソートを行い、感覚的な「塗りやすさ」と合致するよう、私なりに並べ替えている。
お気づきの通り、インク飛沫数は「インク効率の悪さ」と大まかに相関している事がいえるだろう。
プロモデラーとわかばシューターで射撃レートが明確に違うのに反して、塗りやすさであまり差を感じない原因は、このインク飛沫数に起因していたのではないかと想像できる。
特徴的なのはプライムシューターで、インク消費量が2%なのに対しインク飛沫数が3と少なく、塗り効率が特に悪いことが裏付けられた。
.96ガロンは飛沫数4、インク効率2.5%。.52ガロンは飛沫数3、インク効率1.2%である一方、デュアルスイーパーは飛沫数2、インク効率1.2%と、意外なことにガロン系の塗り効率は優遇されている。
スプラシューターはインク効率で比較したときにインク飛沫数は1と少ない。高DPSの代償といえるだろう。
チャージャーのチャージ中の移動のみならず、あらゆるブキは射撃中に移動速度が通常時より低下する。
その低下率はブキごとに異なっている。この移動速度の差が攻撃力や射程とはまた違った、立ち回りの幅の違いにつながってくるのではないだろうか?
今回、ゲーム画面のデジタル録画を用いて、試射場で「塗りリセット」を押してから足下に引かれた7本の基準線を通過する時間を計測した。
自機が線をまたぐ瞬間ではなく、画面端に線が消滅したフレームを基準に計測しているため、追測定しても全く誤差が発生しなかった。
射撃中の移動速度 | |
射撃なし | 5.23秒 |
---|---|
L3リールガン | 6.03秒※ |
わかばシューター | 7秒 |
スプラシューター | 7秒 |
プロモデラー | 7秒 |
N-ZAP85 | 7秒 |
シャープマーカー | 7秒 |
ボールドマーカー | 7秒 |
.52ガロン | 8.4秒 |
ラピッドブラスター | 9.13秒 |
デュアルスイーパー | 10.03秒 |
プライムシューター | 10.03秒 |
ノヴァブラスター | 10.03秒 |
ホットブラスター | 11.16秒 |
.96ガロン | 12.53秒 |
ジェットスイーパー | 12.53秒 |
※リールガンの速度は射撃回数によるため、可能な限り間断なく射撃した場合の参考値
ジェットスイーパーや.96ガロンとL3リールガンは検証せずとも違いがはっきりとわかるだろう。実に二倍の開きがある。
ジェットスイーパーは射撃時にはほとんど足が止まってしまうのに対して、L3リールガンは通常時とほとんど変わらない速度で移動しながら射撃することができる。
ラピッドブラスターは他のブラスターと比べ、射程の他にも機動力でわずかなアドバンテージがあることがわかった。
個人的にわかばシューターとスプラシューターの移動速度が同じなのが意外だった。感覚的にはわかばシューターの方が速い気がしていたからだ。